「囚人のジレンマをベースにしたゲーム」の作成から頓挫への流れ
自分が数学的モデルから「ゲームを作る」時の流れ。
「囚人のジレンマ」をベースにして一か月近く悩んでいた挙句、
収拾がつかなくなってしまって放置してたんですが、
このまま寝かしてしまうのももったいないのでメモ書きも兼ねて公開します。
というかこないだのクリエイティブ系ゲームについてもこれくらいまとめてから
書けばよかったなぁ。
基本のポイント
1対1での1度きりの施行であれば、[裏切り]を出して終了。
それだけではゲーム性は無い。
ポイントになるのは、複数人でのプレイの際に信頼関係を築くことで、
[協力]を出し続けることによる他のプレイヤーとの小さな差を作っていくことが
ゲーム全体を支配することがある、ということ。
ゲームシステムに対応させると、
- 複数人でのゲームシステム
- 隠した宣言、一斉公開などのメカニズム
- 同じ施行を繰り返し、相互関係性を作る、あるいは強制的に作られる
それだけを単純にゲームにしようとすると、
基本的には全体的に協力関係を作るが、どこかのタイミングで[裏切り]を出し
それ以降は協力関係を作れなくなるが、[裏切り]で獲得した利得を元に
勝利できるかどうか…、という感じ。
そもそもの囚人のジレンマについて
[協力]が全体の大多数を占めていて、[裏切り]は少数派、という関係じゃないと
おそらくゲームにならない。
カードの出す割合とかプレイヤーの戦略が8:2くらいでちょうど良いバランスになって、
どちらかに偏ると、少数側の戦略が有利になる…ような感じ。
「協力x協力」と「裏切りx協力」の比率が1:3のとき、
全体の戦略比率が1:3のときにそれぞれの戦略の利得の合計がちょうど釣り合い、
さらにはゲーム全体の利得も最大化される、という特性がある。
これを活かしてバランスをとるとうまくいくような気がする。
というか、世の中のゲーム一般にこのジレンマの要素は少なからず含まれており、
あえてこの思考実験をする以上、囚人のジレンマとそれを取り巻くゲーム理論が
ゲームのメインコンセプトとなっているようにしたい。
絶対に許さない…絶対にだ!
意思決定を三つ巴にする(協力<裏切り<反撃?<協力… など)
それはじゃんけんを面白くしよう、のコーナーで検討します。
そのまんまゲーム化してみる
プレイヤーは円環状に並び、左右隣の(あるいはランダム)プレイヤーに対して
[協力][裏切り]のどちらかを出す。
いわゆる囚人のジレンマの処理を行い、得点していく。
イベントカード的なものがあり、得点効率などが変化。
ゲーム終了もサドンデス的にしておき、裏切るタイミングを計りにくくする。
- このゲーム良くないところ
囚人のジレンマは信頼関係のゲームだが、これがあくまでゲームである以上、
いつかは裏切られる前提。
協力関係を取ることの意義、裏切らない意義が明確でなく、
結局のところランダムに出していくことに対して対策が取れない。
また、一度へこんたプレイヤーに対して、他のプレイヤーが結託して
延々と[裏切り]を出し続けることで、絶対的に勝ち目がない状況もすぐ作れる。
→メカニズムとして、プレイヤーの意図を反映させる/させない要素が必要
どのプレイヤーとなら信頼関係を築けるか?ということを
意図的に選択できるようにした方が良い?
→+αなゲーム性もほしい…?
ワーカープレイスメントとの組み合わせ
基本的にプエルトリコのシステムをそのまま利用。
選択したアクションに対して、囚人のジレンマの利得分だけボーナスがもらえる。
プレイヤーがどのアクションを行いたいか、推定できるので
協力関係、妨害すべき相手などが明確になる。
同じ戦略のプレイヤー同士なら信頼関係を築くべき…、など。
- このゲームの良くないところ
明確な敵対関係ができてしまうと、[裏切り]しかありえないような状況もでてくる
そうするとジレンマ感が無くなってしまうのでちょっと…。
→他の要素でゲーム性を強く出してしまうのはNG
デッキ構築要素の組み合わせ
ちょっとしたデッキ構築要素を追加。
資源/得点を獲得する場に対して、宣言のカードを手札の3枚から2枚出す。
初期はデッキが3枚しかなく、3枚中2枚が協力、1枚が裏切り。
基本的に[協力]だけを出すことができる。
ただし、[裏切り]を出すとデッキに[裏切り]カードが追加される。
デッキからランダムに3枚を引き、その中から2枚をプレイしないといけないので
徐々に[裏切り]を出す可能性が上がっていく。
また、コストを支払うことで手札の裏切りを破棄したり、
追加ボーナスや特殊効果のついた[協力][裏切り]を獲得したりできる。
- このゲーム良くないところ
デッキの状況によって、重要な状況で必要なプレイができないことが出てくる
せっかくのゲーム理論ゲーなので、選択肢は常に選べるようにしておきたい。
→なるべく選択肢自体に制限は加えたくない
チーム戦にする
プレイヤーをわからないように2チームに分ける、あるいは小数を"敵"にする。
(人狼と村人のような比率で)
各プレイヤーは任意の相手と囚人のジレンマを実施していく。
スコアリングに応じて、プレイヤーが脱落したり多数派の勝利条件を満たしたりする。
信頼関係を作る、という意味では非常に親和性の高いゲームシステム。
信頼関係さえ結ぶことができれば、最後まで裏切らなくてよくなる。
- このゲームの良くないところ
だまし合いや嘘をつく、といった要素・プレイスタイルが必要になるので
ジレンマ以上に心理戦・だまし合いが重要になってしまう。
アクション性を持たせる
(略)
- このゲームの良くないところ
せっかくのジレンマなのに、最終的な判断に意思決定以外の要素が入ってしまうのはNG
結論
あたりまえなんだけど、囚人のジレンマの要素は複数人で行われるゲームの場合、
一般的に含まれているもの。
ただし、その要素は他のゲームシステムにおける意思決定のエッセンス・指標であり、
そのものが意思決定の主軸となることは難しい。
逆に、囚人のジレンマは局所的に見てしまうと、お互いに[裏切り]の
ナッシュ均衡に陥るのが自明であり、大局的なゲームの流れを支配する他の要素が
必要になってしまう…。
というわけで、囚人のジレンマだけをゲームにするのは難しいですね、
という結論でした。
今後の予定
下記の要素については十分検討できていないので、
思考実験を続けるのであれば掘り下げていきたい。
- 極端に大人数(100人規模)でプレイ
→信頼関係、というパラメータが人と人との関係ではなくなってくる
- 大局的なゲームの流れも囚人のジレンマになっている
→コンセプトには即している。どう組み込むか?
うまくまとまれば面白くなるかもしれない…